目次電子回路工作入門電子部品の基礎知識




抵抗器とは電流の流れを抑える(流れにくくする)機能を持っています。
回路図の記号では で表します。 抵抗値の単位はオーム(Ω)が使われます。また、1000Ωは1KΩ(キロオーム)、1000KΩは1MΩ(メガオーム)と呼びます。

抵抗器は大きく分けて、固定抵抗器可変抵抗器に分類されます。また、使用している材料により炭素系と金属系に分類されます。
抵抗器を使う場合に重要なポイントは抵抗値もさることながら、定格電力、抵抗値精度があります。
定格電力とは抵抗器が耐えられる消費電力(ワット)で、電力は電流の二乗(I)×抵抗値(R)で求められ、これ以下で使わないと抵抗器が燃えてしまいます。電子回路で良く使うものとして1/8W、1/4W、1/2Wなどがあります。電子回路の信号回路(弱電流)ではそれほど意識しなくても1/8Wで良いのですが、電源回路、発光ダイオードの電流制御用などの抵抗器には割と大きな電流が流れるので定格電力を意識する必要があります。

定格電力
    例えば、12Vの電源電圧を使い、5Vで動作する回路を動かそうとしたとします。このような場合、普通は3端子レギュレータなどを使うのですが、簡便に抵抗器だけで電圧を落とそうとした場合、抵抗器の抵抗値以外に、定格電力も計算しておく必要があります。この時、5Vで動作する回路の消費電流が分からないと計算出来ません。部品の規格表から調べるとか、試しに回路を作ってみてテスタで測ってみるなどで求めます。ここではその消費電流が100mAであったとします。
    抵抗値は12Vから5Vにするのですから、抵抗器に7Vがかかる必要がありますので、7V÷0.1A=70Ωとなります。
    この抵抗器での消費電力は 70Ω×0.1A×0.1A(または7V×0.1A)=0.7Wとなります。
    計算上で求められた消費電力より余裕のある定格電力の抵抗器を選びます。この場合1Wで良いと思います。
    基本的には消費電力の2倍位の定格電力の抵抗器を使う方が無難です。

    1/8Wの抵抗器でどのくらいの電流が扱えるかとみますと、47KΩの抵抗の場合、√(0.125W÷47KΩ )= √(2.66×10−6) = 1.63×10−3 = 1.63mA となります。電子回路の信号回路で47KΩにこんな電流が流れることはあまりありません(流れる時は1.63mA×47KΩとなり 76.6V がかかる場合です)。

抵抗値
    抵抗値の標準についてはJIS C5001でE標準系列として定められています。これは10を対数的に何等分するかで定められています。(対数表参照)
    例えば、E3の場合、10を対数的にほぼ3等分して[1]、[2.2]、[4.7]、[10]としています。
    E6の場合は[1]、[1.5]、[2.2]、[3.3]、[4.7]、[6.8]、[10]となります。
    E12は[1]、[1.2]、[1.5]、[1.8]、[2.2]、[2.7]、[3.3]、[3.9]、[4.7]、[5.6]、[6.8]、[8.2]、[10]となります。
    抵抗値が一見ばらばらな値に見えるのはこのような理由によります。E系列は3、6、12以外に24、48、96、192という系列がありますが、抵抗値としては通常はE12系列を使っているようです。(特殊にはそれ以上を使うこともあるそうです。)
    抵抗値の表示は数字で印字するには部品が小さいため、カラーコードと言う色で表示しているものもあります。1/2W以下の抵抗器はほとんどカラーコードなので、カラーコードの読み方も知る必要があります。






固定抵抗器
    固定抵抗器とは名の通り抵抗値が固定のもので、電子回路で多用されます。

    炭素皮膜抵抗器

      最も一般的で安価な抵抗器です。抵抗値の精度は±5%のものが主流です。定格電力としては1/8、1/4、1/2などが主流です。
      炭素皮膜抵抗器は雑音が大きいという欠点があり、アナログ回路には金属系の抵抗器を使うそうです。私の経験では雑音の欠点が気になったことはありません。
      抵抗器のサイズはだいたい以下のようになっています。本当は規格があるはずですが、買うときの大きさの目安になればと言うことで、手持ちの物を測ってみました。(店にはワット数が書いてあるけどね)


写真の上側から1/8W、1/4W、1/2W

炭素皮膜抵抗器のサイズの目安
定格電力(W)太さ(mm)長さ(mm)
1/8
1/4
1/2



この抵抗器は抵抗アレーと呼ばれるもので、同じ値の複数の抵抗器が一体型で作られています。
各々の抵抗器の片方が内部でつながれているものもあります。
複数の発光ダイオードの電流制御を行う場合など実装スペースが少なくてすみ便利です。
左の写真の抵抗器は8つの抵抗器が下の左の図のようになっています。単に抵抗値のみ(470Ωとか)が表示されているものは、このタイプです。9本の足があり、抵抗値の印刷面からみて一番左側の足が共通となる足です。


      同じような形をして4S470Ωなどと頭に4Sが付いて表示されているものもあります。このタイプは足が8本で下の図の右のように独立した抵抗器が4つ入っているものです。この種の抵抗器の定格電力は確か1/8Wだったと思います。
      サイズは9本の足があるタイプの場合、幅23mm、高さ5mm(黒い部分)、厚さ1.8mmで、8本の足があるタイプは、幅20mm、高さ5mm、厚さ1.8mmでした。




    金属被膜抵抗器
      炭素系抵抗器より精度の高い抵抗値が必要な場合に使われます。精度としては±0.05%位のものもありますが、私が扱う回路ではそんなに高精度の抵抗器は使いません。高価ですから。良くても±1%位のもので十分です。抵抗体の材料としてはNi−Cr(ニクロム)などが使われているようです。金属被膜抵抗器の用途としてはブリッジ回路とかフィルタとか抵抗値のバラツキが回路の性能に大きく影響する場合、アナログの雑音が気になる回路などに使います。

写真の上側から1/8W(1%)、1/4W(1%)、1W(5%)、2W(5%)
( )内の数字は抵抗値精度を表しています。
金属皮膜抵抗器のサイズの目安
定格電力(W)太さ(mm)長さ(mm)
1/8
1/4
3.512
15



可変抵抗器
    可変抵抗器はボリューム(バリアブル・オーム)と呼ばれることもあります。ラジオの音量調整のように容易に抵抗値が変えられるものと、電子回路の部品のバラツキによる動作状態を調整(アジャスト:ADJ)するためなどに用いられ、通常は抵抗値を変えない半固定抵抗器があります。通常の可変抵抗器、半固定抵抗器は回転できる角度が300度位ですが、抵抗値を細かく調整するためにギアを組み合わせて多回転(10〜25回転位)としたもの(ポテンシオメータとも呼ばれる)もあります。
    写真の右側のものは音量調整等、抵抗値を容易に変更できる可変抵抗器です。真ん中のある4つは形はいろいろありますが、プリント板などに実装する半固定可変抵抗器です。左側の2つはポテンシオメータと呼ばれるもので、左側にあるネジを回して抵抗値を変化させます。ポテンシオメータの形はこの写真のようなものだけではなく、一番右側の形に近いものもあります。用途によって形状を選択することができます。
    回路記号は  と表示します。

    可変抵抗器には軸の回転角度と抵抗値の変化する度合いにより3種類あります。
    タイプA(Aカーブ)は軸を右に回転した場合、最初は抵抗値がゆっくり変化し、後半は急に変化するタイプです。
    ラジオの音量調節(ボリューム)などはAカーブの可変抵抗器が使われます。小さな音を微妙に調整するのに適しています。人間の耳で聞いた音量の関係(小さな音の変化は良く分かるが、大きい音の変化はよく分からない)に適しているのだと思います。
    タイプB(Bカーブ)は軸の回転と抵抗値の変化が直線的に変化します。
    回路中の抵抗値設定、バランス回路など調整することが目的の場合に良く使われます。
    タイプC(Cカーブ)はタイプAと逆で、軸の回転の最初は抵抗値が急激に変化し、後半はゆるやかな変化をするタイプです。
    このタイプはあまり使用されません。特殊な用途になります。

    市販されている可変抵抗器はほとんどがタイプAまたはタイプBです。


受光素子(Cds)
    光によって抵抗値が変化する部品があります。カドミニュームを使ったもので、光が当たると、抵抗値が小さくなります。
    受光感度、サイズ、抵抗値などによって種類がいろいろあります。


写真のものは円筒形の直径が8mm、高さが4mmの大きさで、光が当たらない時には2MΩ位、光が当たった時には200Ω位に抵抗値が変化します。光の当たり方(強さ)によって抵抗値は変わります。
このCds素子は車のヘッドライトの点灯確認装置に使っています。


その他の抵抗器
    炭素被膜抵抗器、金属被膜抵抗器以外によく使われる抵抗器の種類としては、巻き線抵抗器があります。
    巻き線抵抗器とは金属の細い線を材料にしたもので、線の長さを調整することで、精密な抵抗値を得ることが出来ます。また、太い線材を使うことができ、大電力用の抵抗器を作ることが出来ます。実際には精密な抵抗値を得るよりも大電力用の抵抗器の用途が多いと思います。
    欠点としては線を絶縁体にコイル状に巻き付けるため、周波数の高い回路には使えません。
    よく見かけるものとしては抵抗器を焼き物で覆ったホーロー抵抗器やセラミックのケースに挿入して特殊なセメントで固めたセメント抵抗器などがあります。1〜2Wから数十Wのものまであります。
    大電力用の抵抗器を使う場合、多量の熱が出ますので、(抵抗器は熱に耐えられるようになっているが、熱は出ます)放熱を十分に考慮することが必要です。

左の写真はホーロー抵抗器で、
上側が10Wのもので、太さ13mm、長さ45mm、
下側が50Wのもので、太さ29mm、長さ75mmです。

上側は取り付け金具を付けた状態です。絶縁のために碍子(瀬戸物)ではさむ構造をしています。



上の写真はセメント抵抗器で5Wのもので、幅22mm、奥行9mm、高さ9mmです。






 サーミスタ


温度により抵抗値が変わる部品としてサーミスタ(Thermistor:Thermally sensitive resistor )があります。
温度調整の温度センサーとしてよく使われる部品です。


サーミスタには大きく分けて3種類あります。
     NTC(Negative Temperature Coefficient Thermistor)
      :温度が上昇すると抵抗値が連続的に減少するタイプです。

     PTC(Positive Temperature Coefficient Thermistor)
      :温度が上昇すると特定の温度以上で抵抗値が急に増加するタイプです。

     CTR(Critical Temperature Resister Thermistor)
      :温度が上昇すると特定の温度以上で抵抗値が急に減少するタイプです。
温度計などの温度制御に使われるタイプはNTCタイプが多いです。




NTCタイプのサーミスタの温度と抵抗値の関係は以下の式で求めることができます。


    R:温度Tでの抵抗値
    T:温度[K]
    R0:基準温度T0における抵抗値
    T0:基準温度[K]
    B:定数

    基準温度としては一般に25℃が使われます。
    温度の単位はK(ケルビン)で絶対温度(-273℃を0とした値)です。
    25℃は298ケルビンです。







カラーコードの読み方
数値乗数 精度
(%)
温度係数
10-6/℃
-±250
±1±100
±2±50
±0.05±15
-±25
±0.5±20
±0.25±10
±0.1±5
-±1
--
-−1±5-
-−2±10-
--±20-

精度の高い抵抗器では6本のカラーコードが付けられているものもあります。
その場合、精度の次のカラーコードは温度係数を表します。
上の例
(茶=1),(黒=0),(橙=3),(金)
 10 × 10 = 10KΩ
 精度(金) = ±5%
上の例
(黄=4),(紫=7),(黒=0),(赤=2)
 470 × 10 = 47KΩ
 精度(茶) = ±1%