目次事例集赤外線センサー検出ユニット


赤外線検出ユニット 回路説明



赤外線信号増幅回路


オペアンプを2段使用し、赤外線センサーで検出した信号を約1600倍に増幅します。各段で約40倍です。正確に言うと一段目は非反転増幅なので、(1+R12/R11)=41倍、二段目は反転増幅なので(R22/R21)=40倍です。
できるだけ人とか動物の動きだけを検出させるため、増幅器には抵抗器とコンデンサを使用したバンドパスフィルター(BPF:Band Pass Filter)機能を持たせています。
オペアンプによるバンドパスフィルターの動作については「オペアンプによるバンドパスフィルター」を参照して下さい。
バンドパスフィルターは低域カットオフ周波数(foL)と高域カットオフ周波数(foH)に挟まれた周波数を通過させるフィルターです。
各々のカットオフ周波数は以下の式で求めることができます。
1段目の定数を使用すると以下のようになります。

1段目も2段目もCとRの値を同じにしているので、周波数帯域は同じになります。

1段目を計算すると以下のようになります。
条件:C11=10μF、R11=51KΩ、C12=0.01μF、R12=2MΩ

今回の増幅回路では約0.3Hzから8Hzの間の周波数の信号を増幅することになります。
0.3Hz以下の周波数または8Hz以上の周波数が増幅されないわけではなく、増幅されにくくなり始める周波数です。
ゆっくりとした変化または急激な変化は検出しません。人や動物の動きを検出するためにはこの周波数帯が適しているようです。


今回の回路ではオペアンプを単電源で使用しています。ですから、バイアス電圧を加えないと、振幅が均等に増幅できず、歪みが生じてしまいます。一段目のオペアンプの場合、赤外線センサーの出力に重畳されているオフセット電圧(0.2〜1.0V)がバイアス電圧になります。実測値では0.7Vでした。

二段目ではプラス端子に約1.7Vのバイアス電圧を加えています。赤外線信号増幅回路とウインドウコンパレータ回路はコンデンサを介して接続されていて、コンパレータ入力には電源電圧の1/2のバイアス電圧が加えられています。ウインドウコンパレータのウインドウ電圧が約1.7Vですので、信号の振幅が1.7Vp-p以上あれば動作上問題はありません。

今回の回路以外で使用する場合には、バイアス電圧は電源電圧の1/2にして使用する必要があります。






ウインドウコンパレータ回路


電圧の変動が規定の変動幅以上になったかどうかを検出する回路です。赤外線センサーで検出した変動に不感幅を持たせて、誤検出を少なくするための回路です。
電圧比較をするための回路ですが、今回の回路ではオペアンプを使用しています。

IC1は上限電圧検出用でプラス入力端子に基準電圧として+3.3Vが加えられています。マイナス入力端子の電圧が+3.3V以下であれば、出力はHレベルです。マイナス入力端子の電圧が+3.3V以上になると出力は急激にLレベルになります。
IC2は下限電圧検出用でマイナス入力端子に基準電圧として+1.7Vが加えられています。プラス入力端子の電圧が+1.7V以上であれば、出力はHレベルです。プラス入力端子の電圧が+1.7V以下になると出力は急激にLレベルになります。
IC1のマイナス入力端子およびIC2のプラス入力端子には+2.5Vの電圧が加えられていて、赤外線センサーで人などの動きを検出した場合に電圧が変動するようになっています。
IC1およびIC2のどちらかのICがLレベルになると出力はLレベルになります。ICの出力に付けられているダイオードは片方のICがLレベルになった場合、もう片方のICから過電流が流れないようにするためのものです。






出力回路

ウインドウコンパレータの出力は入力が上限または下限を越えたときのみLレベルになるので、非常に細いパルスの場合が多いです。このパルスでは出力のリレーを動作させることは困難です。そこで出力回路として555というタイマーICを使用して出力を一定時間保持するようにしています。
555タイマーはトリガ入力(点)がLレベルになった時点から動作を開始し、コンデンサ(C)および抵抗器(R)で決められた時間になるまで出力をHレベルに保持します。一度動作を開始すると入力パルスがHレベルに戻っても動作を継続します。

タイマーの時間は以下の式で計算されます。

t = 1.1CR


555タイマーの動作については「555タイマー」を参照して下さい。

今回の回路での値を入れて計算すると以下のようになります。
条件:C=10μF、R=100KΩ
t= 1.1 x 10 x 10-6 x 100 x 103

= 1.1秒

タイマーの動作は約1秒間継続することになります。
この値は部品のバラツキにより変わりますので、目安として使用します。
Rを1MΩにすれば、動作時間は約10秒になります。

タイマーのリセット端子(4番ピン)に接続している回路は周囲の明るさにより出力回路の動作/非動作を制御する回路です。リセット端子がHレベルの場合、タイマーは動作可能な状態です。Lレベルになると非動作状態で入力にパルスが入っても動作しません。Cdsは光りが当たると抵抗値が下がり、光りが遮られると抵抗値が高くなる性質を持っています。
VR1がCds側になっている場合、Cdsに光りが当たるとタイマーのリセット端子はLレベルになり、タイマーは動作しません。光りが遮られるとリセット端子はHレベルになり、タイマーは動作可能な状態になります。
VR1が電源側になっている場合、Cdsの抵抗値に関係なくタイマーのリセット端子は常にHレベルになり、動作可能な状態です。VR1の位置により出力回路の動作する明るさを調整することができます。

タイマーの出力(3番ピン)とリセット端子(4番ピン)に接続されているダイオードは出力のバタつきを防止するためです。一度出力がHレベルになるとリセット端子を強制的にHレベルにします。タイマーが動作している途中でCdsに光りが入ってもタイマーが規定時間動作するようにするためです。

タイマーの出力はリレー駆動用のトランジスタのベースに接続されていて、点がHレベルになるとトランジスタはON状態になります。これによりリレーが動作し、出力接点が閉じます。リレーのコイルと並列に入れているダイオード(D)はリレーのON/OFFで発生する比較的高い電圧(逆起電力)でトランジスタが壊れるのを防止するために入れられています。





電源回路


入力電源電圧としては+12Vを使用するようにしています。内部回路は+5Vで動作させているため3端子レギュレータを使用して安定した+5Vを作っています。内部回路の電圧をもっと高くすることもできますが、単純に電圧を上げるとウインドウコンパレータの検出電圧の幅が広がってしまいます。その場合にはコンパレータの基準電圧設定用の抵抗器を変更する必要があります。あまり厳密に行う必要はありません。