目次電子回路工作素材集無安定マルチ(IC)


無安定マルチバイブレータ(ICタイプ) 点滅周期の計算


インバータが反転する周期はコンデンサ(C)、抵抗(R)およびスレッショルド電圧(VT)によって決まります。厳密にはさらにCの放電状況によっても変わります。インバータAの場合はCxとRxが関係し、インバータBの場合はCyとRyが関係します。

コンデンサ(C)と抵抗器(R)が直列に接続された回路に電圧(V)が加わった場合の電流変化は以下の式で求めることができます。


時間と共に変化する電流 (A)

印加電圧 (V)

抵抗値 (Ω)

自然対数の底(2.71828)

充電開始後の経過時間 (秒)

CR時定数(C×R)

抵抗器(R)の両端に加わる電圧の変化は


この値がVと等しくなる時間がインバータの反転する時間になります。


時間(t)は以下のようになります。

この値は半周期の時間になります。

実際の値を当てはめてみます。対数の値は対数表を見て下さい。

条件
C = 47μFR = 12kΩVT = 1.4VV = 4.5V

=- ( 47 × 10-6 ) × ( 12 × 103 ) × ln ( 1.4 / 4.5 )

=- ( 564 × 10-3 ) × ln ( 0.31 )

=- ( 564 × 10-3 ) × ( -1.17 )

=660 × 10-3

=0,66 秒


ハイレベル状態の時間 ( TH )とローレベル状態の時間 ( TL )が同じとすると、周波数は以下のようになります。
=1 / ( TH + TL ) = 1 / ( 0.66 + 0.66 )

=0.76 Hz

ICによってシュレッシュホールド電圧(VT)が多少違いますので、計算結果とは違うことがあります。CxとRxの組み合わせとCyとRyの組み合わせの値が異なると、ハイレベル状態の時間( TH )とローレベル状態の時間( TL )とが異なります。ハイレベル状態の時間とローレベル状態の時間が同じ状態をデューティ50%と言います。

今回作成した回路の周波数を測定すると0.93Hzでした。

周期が計算値と合わない場合の主な原因として以下のことが考えられます。
    コンデンサの放電状況
      コンデンサの放電が行われないと、スレッショルド電圧に達するまでの時間が短くなります。

    ハイレベル電圧(V)
      インバータ出力のハイレベル電圧が影響します。
      今回の回路ではトランジスタ駆動のために定格より大きな電流を流しています。測定では約4.5Vでした。この電圧が低くなると、時間は短くなります。

    スレッショルド電圧(VT)
      ICの種類によって違ってきます。この電圧が低いほど時間は長くなります。

    ダイオードの電圧降下
      ダイオードに流れる電流により、ダイオードで電圧降下が発生します。この値が大きいほど、周期は短くなります。