目次電子回路工作素材集無安定マルチ(IC)


無安定マルチバイブレータ(ICタイプ) 回路説明


まず、インバータAの入力をローレベルと仮定します。この時、インバータAの出力はハイレベルになります。

Cyに電荷が溜まっていないとすると、インバータAの出力→Cy→Ry→Dy→インバータBの出力と電流が流れます。
最初はインバータBの状態は不定ですが、完全にはハイレベル状態ではないので、上記の電流が流れます。
Cyに電荷が溜まり始める時にはCyは短絡状態と同じように見えます。ですから、インバータBの入力はハイレベル状態になります。これによりインバータBの出力は完全にローレベルとなり、上記の電流ルートが完全に形成されることになります。インバータAの入力にも電流が流れますが、微量ですので、ほとんどはRyを通るルートで電流が流れます。

Cyに電荷が溜まってくると、電流が減ってきます。それに伴ってインバータBの入力電圧も下がってインバータBのスレッショルド電圧(VT)に近づきます。インバータBの出力はローレベル(ほとんど0V)ですので、Ry、Dyを通してさらに電流は流れ続け、インバータBの入力電圧はスレッショルド電圧(VT)になります。

するとインバータBの出力は反転してハイレベル状態になります。
インバータBの出力がハイレベルになると、Dyのカソード側の電圧が高くなり、Ryを通る電流は停止します。もし、DyがないとインバータBの出力がRyを通してインバータBの入力に伝わってしまい、再びインバータBの入力がハイレベルとなり、出力がローレベルとなるというように繰り返してしまい、インバータBは発振動作をしてしまいます。

インバータBのハイレベル出力はCxを通してインバータAの入力をハイレベル状態にします。この時電流はインバータBの出力→Cx→Rx→Dx→インバータAの出力と流れます。
インバータAの入力がハイレベル状態になると、インバータAの出力はローレベルになります。Cyには既にインバータAの出力側をプラスとした電荷が溜まっており、その状態でインバータAの出力がローレベル(0V)になったため、インバータBの入力側の電圧はマイナス電位からスタートすることになります。Cyの電荷の放電はインバータBの入力→Cy→インバータAの出力と電流が流れることにより行われます。
Cxに電荷が溜まってくると、電流が減り、インバータAの入力電圧が下がります。インバータAの入力電圧がインバータAのスレッショルド電圧になると、インバータAの出力はハイレベルとなります。


これで、説明の最初の状態に戻りました。
以後、この動作を繰り返します。

ここで疑問があるかも知れません。
最初、インバータAの入力をローレベルとしました。この回路の電源を投入した時点ではインバータの状態は定まっていません。ただ、インバータの特性は全く同じではありません。どちらかのインバータの出力が先にハイレベルとなり、それにより、状態が確定します。理想的なインバータ回路があった場合、繰り返し動作をしないことも考えられますが、実際にはそうはならず、繰り返し動作をします。

Cx、Cyの放電。
インバータが反転した後、CxまたはCyは放電(電荷を逃がす)をする必要があります。
この放電にはインバータの入力から流れ出る電流が必要になります。この放電が行えないと、次の周期で既に電荷が溜まっている状態からスタートするので、すぐにスレッショルド電圧になります。すなわち、繰り返しの周期が短くなるか、または、繰り返しが行われないことになります。周期を長くしようとしてコンデンサの値を大きくしても放電が十分行われずに周期が長くならないこともあります。
また、インバータとして74HC04を使った場合、入力電流がほとんど流れないので、放電が行われず正常な動作をしません。実際、74HC04で今回作成した回路を動作させてみました。最初は一見正常な動作をしましたが、しばらくすると両方のLEDが同時に点灯したり、正常な動作をしませんでした。