目次電子回路工作素材集正弦波発振器


ウィーンブリッジ正弦波発振器 動作説明



 正弦波とは
    円周を時間と共に移動したときに変化する高さを表したものが正弦波(Sine Wave)です。

円の周りを一周すると元の場所に戻ります。
今は周波数を表すのにヘルツ(Hz)という単位を使いますが、以前は周波数を表す単位としてサイクルという言葉を使用していました。
これは1秒間に円を何回まわるか(1周は1サイクル)ということで、高い周波数は回転が速いわけです。
左の図で、正弦波が0V→プラス→0V→マイナス→0Vまでを1サイクルと言います。

周波数に関係する言葉で「周期」と言う言葉があります。これは1サイクルに要する時間です。周波数の逆数になります。
周期(T)=1/周波数(F)
周波数(F)=1/周期(T) という関係です。
例えば家庭で使用している電気は50Hzまたは60Hzです。50Hzの場合、1周期の正弦波が1秒間に50回発生していることになります。60Hzでは60回です。
ですから、1周期は1/50=0.02秒(20ミリ秒)となります。60Hzの場合は16.6・・・ミリ秒です。

正弦波が円と関連していることを直感する方法としてリサージュ円を描かせる方法があります。見たからと言ってどうということもないのですが、正弦波が円と関係が深いことが分かった気になるかも知れません。
歪みの無い正弦波は円を描くと真円になります。





 発振器の原理
    カラオケなどでマイクをスピーカに近づけてしまって、ピーとかギャーとか不快な音が出たことはありませんか? これはハウリングという現象です。

電気回路での発振器の原理はそれと同じ方法が多く採られています。要はアンプで信号を増幅し、増幅した信号を入力に戻すという方法です。
カラオケと違うのは不注意ではなく、意図的にやることです。(カラオケで意図的にハウリングさせる人もいますが)

歪みの少ない(快適な)信号を安定に発生させるのが発振器です。


    発振器での帰還回路は主に以下の役割があります。
発振周波数を定める
特定の周波数で発振をするように制御します。特定の信号だけが入力に戻るようにします。
発振に必要な増幅器への入力を制御する
帰還回路を通して増幅器に戻る信号が大きすぎると増幅器が飽和現象を起こして、きれいな信号は出ません。
発振に必要な周波数の位相を合わせる
位相とは信号の山と谷の位置を言います。電気回路ではコンデンサ、コイル、増幅器自体により入力と出力の位相が違います。ですから、入力信号の位相を合わせないと発振しません。
カラオケのアンプでは位相制御で出力と入力をうち消し合うように帰還させて、ハウリングが起きにくくしているものもあります。

上記以外に温度により発振周波数、出力が変化しないようにするなどの役割を持たせている回路もあります。




 ウィーンブリッジ発振回路の原理
    基本構成

左の図はオペアンプを使用したウィーンブリッジ発振器の基本形です。
C1,C2,R1,R2で構成される部分は正帰還によりオペアンプに発振動作をさせると同時に、CRの時定数により発振周波数を定めます。
一方、R3,R4の回路はオペアンプの増幅率を制御します。
詳しい計算式は省きますが、この発振器は増幅率を3とすると発振します。3未満では発振しません。3を越えると出力が飽和してきれいな信号が出なかったり、発振が止まってしまいます。
増幅率を3に制御する必要があります。
ですから、この基本回路だけでは実用には使えません。



    どこがブリッジ?

回路を変形すると左の図のようになります。
このブリッジの平衡条件が発振条件になります。
発振周波数は以下の式になります。

C = C1 = C2、R = R1 = R2とすると以下になります。

この時に安定した発振をするために必要なオペアンプの条件は増幅率=3です。
増幅率から逆算してR3とR4の関係を求めると以下になります。(正相増幅
3=(1+R4/R3) すなわち R4=2・R3 の条件が必要です。




    CR回路による周波数決定の原理

正帰還回路の回路構成は左のようになっています。
この回路の構成はローパス・フィルタとハイパス・フィルタから構成されていることが分かります。
ローパス・フィルタとは周波数の低い信号は通過するが、周波数が高くなるほど信号が通過しにくくなる特性を持っています。周波数が高くなるとC1により信号が接地に流れて出力電圧が低くなります。
ハイパス・フィルタは逆に周波数が高い信号は通過するが、周波数が低くなるほど信号が通過しにくくなる特性を持っています。周波数が低くなるとC2を通過する信号が少なくなるためです。

    この2つを組み合わせると、特性が重なった周波数の領域の信号が通過するようになります。このようなフィルタをバンドパス・フィルタと言います。特定の周波数帯(バンド)だけを通す(パス)フィルタと言う意味です。
この特性を利用してウィーンブリッジの発振周波数を決定しています。




 ウィーンブリッジ発振の振幅制御
    オペアンプを使用したウィーンブリッジ発振回路で一番苦労するのは振幅制御回路です。
    簡単なものから、凝ったものまでいろいろな回路があります。
    今回使用した回路は出力を全波整流して直流にし、それによりFET(電界効果トランジスタ)を使用して増幅率を決める抵抗値を変化させるものです。

    電界効果型トランジスタ(FET)の動作原理

左の図はNチャネルの接合型FETの動作原理を示したものです。
制御しようとする回路の電流はNチャネルの半導体のドレイン端子からソース端子に向かって流れます。ゲートにはPチャネルの半導体が使われます。ゲート端子にマイナスの電圧が加わるとNチャネルの電子(マイナスの電荷を持つ)は反発してPチャネルとの接合部分に空乏層(電子が存在しない部分)ができます。この空乏層には電子が存在しないので、電流は流れません。ゲートに加わる電圧が高くない場合には空乏層は小さく、ドレイン電流の流れはあまり影響を受けません。



ゲート端子に加わる電圧が高くなると空乏層も大きくなります。
そのため、ドレイン電流は流れる場所が狭くなり、電流が減ることになります。
すなわち、ゲート端子に加える電圧を変えることによって、ドレイン電流を制御することができるわけです。

FETの大きな特徴はゲートに電流が流れないということです。
ゲートの電圧のみで制御できるのです。制御するのに電力(電流×電圧)がいらないのです。この動作は真空管の動作と良く似ています。
FETを制御する回路は制御する電圧だけ気にしてれば良いわけです。




    振幅制御回路

IC(2/2)で構成する回路は全波整流回路です。
発振器の出力電圧がプラス電圧の場合、D2を通してIC(2/2)のマイナス入力端子に信号が伝わります。プラス入力端子にはD3がブロックして信号は伝わりません。
この時、IC(2/2)は反転増幅をするので、IC(2/2)の出力にはマイナスの電圧が出ます。

次に、発振器の出力電圧がマイナス電圧の場合、D3を通してIC(2/2)のプラス入力端子に信号が伝わります。マイナス入力端子にはD2がブロックして信号は伝わりません。
この時、IC(2/2)は正相増幅をするので、IC(2/2)の出力にはやはりマイナスの電圧が出ます。
このようにIC(2/2)には常にマイナスの電圧が出ることになります。
IC(2/2)の出力は脈流ですので、D1を通してR7およびC4で平滑し、完全な直流とします。
全波整流回路による直流はIC(1/2)の出力(発振器出力)の信号の大きさにより変化します。

全波整流回路により作られた直流電圧はR6を通してTR1(FET)のゲート端子に伝えられます。
IC(1/2)の出力信号が大きくなるとTR1に加わるマイナス電圧は高くなります。すると、TR1のドレインとソース間の抵抗値も高くなります。R3と直列に入っているTR1の抵抗値が高くなるとIC(1/2)の増幅率を下げることになります。それにより、IC(1/2)の出力も抑制されます。
R5とC3はTR1の周波数特性を改善するもので、TR1による発振信号の歪みを少なくするためのものです。
周波数補正がない場合周波数補正をした場合

以上の動作により、IC(1/2)の発振は安定した動作を行うわけです。このような動作をAGC(Automatic Gain Control)と言います。